翻訳かあさん、崖っぷちを走る

(更新お休み中)3歳保育園児と8歳小学生を育てながら働くフリーランス翻訳者のはなし。

涙の断乳と現在の仕事事情

7月末のこと。子が1歳2か月を迎える前日、断乳に踏み切りました。

子ども自身はもう幼児食をもりもり食べており、母乳は「ま、くれるっていうんなら飲んでもいいけど。」くらいの感じで、栄養的にはまったく不要になっていました。あとは母の気持ちの問題だけ。

我が子に母乳を与えるというのは特別な体験で、3人目が1万パーセントない私としては、人生最後の授乳は上の子妊娠からの思い出が次々に頭に浮かんで、ぼろぼろ泣きながらになりました。

3日後の夜、約2年ぶりにビール(モルツ)を飲みました。控えめに言って人生で一番うまいビールでした。

 

さて、生後10か月で認可保育園に入ってからの我が子ですが、「保育園の洗礼」と申しましょうか、順調に発熱・休園を繰り返しております。

どれくらい休んでいるのかを可視化してみました。

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1歳児、認可入園後の病欠日

1週間休まず通園できる方が珍しいのです。

脅かすつもりはないのですが、0~1歳児を集団生活させていればこれは特別にひどい方ではないと思います(6月はRSウイルスが園で流行したので多めかもしれませんが)。上の子のときもこんなもん、でした。

免疫が構築されていない赤子が同じような赤子の集団で生活するのです。仕方がありません。健康管理ができていないわけではありません。こういうものなのです。

次の山場は年が明けてからのインフルエンザの流行時期でしょうか。恐ろしい。

これから赤ちゃんを保育園に入れるという方、一例として参考にしてください。0~1歳を何とか耐えれば免疫がついて、2歳以降はぱたりと休まなくなりますたぶん。

 

 

このような感じですので、仕事のスケジュールには非常に慎重になります。

保育園に休まず通ってもらい、留守の間みっちり仕事をすれば、ひどく仕事が遅い私でも1日1300ワードくらいはできそうなのですが、この調子ではとてもとても、その「めいっぱい」の分量は請けられません。

また、いつ園から呼び出しが来るかわからないので、どんなに分量が少なくても、受注した日に納品しなければならない「当日納期」の案件は請けていません。

 

現状では次のように3社から受注しています。いずれも翻訳会社です。

 ① A社:

1日500Wくらいの計算で途切れなく受注している。

 ③ B社:

100〜300Wの案件を作業期間2〜3日で継続受注している。自動受発注システムが使われるため、対応できる以上の打診はワンクリックで辞退できる(お断りすることへの心理的負担が少ない←重要!)。

② C社:

特定案件で指名をもらって、月に1度ほど1回につき数千ワードを受注している。1日700Wくらいでスケジュールを組む。単価(と、その他もろもろ)的に最優先のお客様。

 

今はこの3社からの案件に絞っています。

先ほど書いたとおり、子どもの病気などでほとんど仕事ができない日がたびたびありますし、昔から体力に自信がなく、無理をしないように心がけているので、営業日あたりに均すと1日700ワードほどしか作業できていません。1日2000ワードが一般的とされる分野の翻訳者としては情けなく思いますが、現状ではこれが精いっぱいです。

 

上記以外の取引先からも打診があるのですが、比較すると単価が低いのと、どう考えてももう入れられないので最近はお断りしています。疎遠になっちゃうかもしれないけど、仕方ないですね。

 

産休から復帰するときは「1日数百ワードしかできず、当日納期は請けられないという制限までついている翻訳者に仕事は来るんだろうか?」と不安でたまらなかったのですが、取引先に正直に事情を伝えておくと、こちらの希望に合う案件をまわしてもらえるようになりました。ほんとうに有り難いことです。

 

その上でさらに働きやすくなるように、そして単価も上がっていくように、トライアルを受けないか?と声をかけてもらったときには積極的に受けています。ただしそのときには、「今は子どもが小さくて1日数百ワードしかできない、当日納期は不可」というのを事前に伝えています。それなら今回はけっこうです、と言われるときもあれば、それでもOK、と言われるときもあります。OKという場合の方が多いです。

 

乳児(保育園的定義では3歳未満の子ども)の親としては高齢ですし、乳児と幼児を抱えて倒れるわけにはいかないので、今はとにかく体力を使い果たさず、余力を残しながら仕事をすることを心がけています。

 

心ゆくまでめいっぱい仕事ができるのは、さていつのことになるのでしょうか。その頃にはだいぶおばあちゃんになっていて、めいっぱい働きたくてもできなかったりしてね。

認可保育園に通いながら認可外を思い出してみる

下の子が生後4か月で入った認可外保育園を生後10か月で退園し、認可保育園に入ってから3か月半ほど経ちました。

 

上の子が1歳3か月で入園したのと同じ園に入れたので、勝手がわからなかったわけではないのですが、3月まで通っていた認可外保育園と環境ががらりと変わったので、最初は戸惑いました(私が)。

  

下記はあくまで私が経験した園の話です。園によって大きな違いがあると思います。たとえば我が家の周辺で、認可でもおむつを持ち帰らなくていいところはたくさんあります。子供を入れる前に必ず見学してくださいね。

 

【今の認可園のいいところ】

  • 大規模なので友達がたくさんできる
  • 前の認可外にはないようなイベントが多く、特別な経験ができる(移動動物園が来たり、阪神タイガースからトラが遊びにきたり、5歳児お泊まり保育があったり)
  • 園庭、室内の運動場、プール、屋上菜園など設備面が充実している
  • 昼寝用布団はバスタオル(コットに敷く)

 【今の認可園の難点】

  • 慣らし保育が長く、1~2週間は親同伴(ただしウチはもう仕事を始めていたので特例で3日間にしてくれた)
  • 各種連絡手段がアナログ。休みは電話連絡(乳児はしょっちゅう休むのでなかなか面倒である)
  • おむつは持ち帰り(私は割りと潔癖なので毎日ダメージを受ける)
  • 熱が37.5°を超えると呼び出される、37.5°を超えると病院に行けと言われる(コロナで厳しくなった)
  • 解熱後24時間は登園できないので、平日に熱が出ると「明日もお休みでお願いします」と言われる。このときの絶望感は筆舌に尽くしがたい
  • 仕事が休みの日は預けるなというプレッシャーが強い
  • どちらかの子が休みだと、親は仕事が休みだとみなされて、他方の子を早くお迎えに行かなければならない。ウチは子供が休みでも仕事休みにはならないのでつらい
  • お迎え時間に遅れるなというプレッシャーが強い。お迎え前に寄り道をしているところを見つかると注意される(駅からくるお父さんお母さんは駅前のスーパーで夕飯の買い物くらいしたいよね?)
  • 各家庭の事情に合わせた対応というのはあまりしてくれない。小回りがきかない

 

ちょっと熱が上がったら呼び出しで翌日もお休み、というのは、子供のことを考えたらそれが一番良いことはもちろんわかっているんです。です。です。

 

ただ、0~1歳児は37.5°なんてすぐに超えてしまうし、連れて帰ってきて測ったら熱はなかったということばかりなので、もうちょっと基準をゆるくする(30分後にもう1度測ってそれでもやはり熱があったら呼び出し、とかさ)のが現実的ではないのだろうか……と思ったり思わなかったり。

 

最近は律儀に毎週熱を出し、1週間全部登園できたことなんてとんと無いのでやさぐれているだけです、ハイ。

 

 【前の認可外園の良いところ】

  • 少人数でアットホームな雰囲気
  • おむつ持ち帰り不要
  • 連絡はすべてLINE
  • 仕事が休みでも快く預かってくれる
  • 0歳児の場合、発熱の連絡が来るのは38.0°を超えてから。受診しろとか、明日も来るなとか細かいことは言われない
  • お迎え時間に遅れそうなときはLINEで一言連絡すればうるさいことは言われない

 【前の認可外園の難点】

  • 少人数(0~5歳児全体で25人くらい)なのでお友達はあまりできない
  • 基本的に認可に入れるまでの「つなぎ」なので年単位で通う子は少ない。年齢が上に行くほど人数が少なくなる。そのため長く通わせたいと思っても、まわりがどんどんやめていくので心理的に難しいと思われる
  • 園庭がない(毎日公園へお出かけ)
  • お昼寝布団一式持参(月曜の朝に雨が降ると悲惨)
  • 認可園に比べて先生が少ないと思われる。保育士資格がないスタッフさんもいる

 

園長先生や担当保育士のキャラクターに依るところも大きいと思うのですが、親の心理的な負担という面では認可外のほうが断然楽でした。認可外に戻ろうかと本気で考えるくらい……。費用面でムリですがね。

 

子供を預けている間に外出する(別に遊びに行くわけじゃなく、必要な用事を済ませるためね。たまには親だって遊びに行ってもいいと思うけど)ときに、認可外のときは何も気にする必要はなかったけれど、認可に入れてからは「園の保育士に見つからないか」とすごく緊張してピリピリするようになってしまいました。ルール上は仕事休みの日でも16時半までなら預けていいことになっているのですが、「仕事休みなら預けるな!」という圧が強い園なので。認可ってどこもこうなんだろうか。

 

最初は認可外に入れるということだけで不安だったんです。事故が起きたらどうしようとか、ひどい給食を食べさせられたらどうしようとか(数年前にそういう事件ありましたよね)。でもやはり、実際に通わせてみなければ全然わかりませんでした。

 

生後3か月を過ぎ、家で赤子を見ながら仕事をすることに限界を感じ、やむなく認可外を見学したら、やさしい園長先生が親身になって話を聞いてくれて、空きがなかったところを何とか入園させてくれました(詳しい経緯は過去の投稿をご覧ください)。

 

「認可外であること」だけに少し不安を感じながらも、先生たちを信頼して預けることにした決断は間違っていませんでしたね。あのときの自分をほめたい。

 

ちなみにご本人(約1歳児)は、認可外も認可も気にせずニッコニコで通っています。何よりです。

 

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おねえさまの作品、タオル掛け

 

赤ちゃん、1歳になる

我が家の赤ちゃんが無事に1歳になりました。

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事情によりお見せできないのが残念ですが、満面の笑みです

まだまだ言葉もしゃべれず歩くこともできない赤ちゃんではあるのですが、もうこの先0歳の子を育てることはないんだな、と思うととてもさみしいですね。

0歳児のかわいさって格別ですからね。

なお3人目は1万パーセントありません。

 

0歳児って放っておけば死に向かう生き物で、それをなんとか母と父が周りの人の手を借りつつ食い止めているわけです。

365日、1日たりとも気が抜けない。

どんなに体がつらくても、父母ともにノロウイルスで嘔吐を繰り返していても(そんなことありましたな)、泣いたら駆け寄っていって抱き上げて必要を満たしてやらなければならない。

それを1年間続けて、子を生かしたまま1歳の誕生日を迎えられるのは奇跡以外の何ものでもないのです。

だから1歳の誕生日はめいっぱいお祝いをするのです。

 

1歳をすぎるともうフニャフニャの赤ちゃんではなくなってだいぶ安心感が出てきますね。

まだ目が離せないことには変わりないのですが、「放っておいたら死んでしまう」感はだんだん薄れていきます。

 

最近はつかまり立ちとつたい歩きが上手になり、今日は初めて、何にもつかまらない状態で足が一歩前に出ました。そのうち自力で歩き出すでしょう。

 

不安だらけの世の中で胸がつぶれそうになる日もあるけれど、2歳のお誕生日も無事にお祝いできますように。

 

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ホットケーキとヨーグルトでつくった離乳食ケーキ。ほとんど姉(6歳)が食べた

 

せっかく取ったのに、ITソフトウェア翻訳士

もう4、5年前、まだ翻訳会社の社員だった頃のことですが、「ITソフトウェア翻訳士認定試験」という試験を受けて、1級に合格しました。

 

この試験、私が受けた1年後くらいに消滅したようです。歴代の合格者には事前連絡があった……ということはまったくなく、ある日気づいたら公式サイトが消えていたので、廃止になったのでしょう。

 

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オンラインの試験で、試験時間は10時から15時の5時間、分量は700ワードくらいでした。子どもがまだ赤ちゃんだったので5時間の試験を自宅で受けるのは現実的ではなく(「ねーねーおかーしゃーん!!」が2分おきに発生するため)、夫ひとりで赤子を5時間外に連れ出せというのも酷だったので、ネットカフェにPCを持ち込んで受験しました。ランチはデリバリーしてもらって。

 

もうだいぶ記憶も薄れているのですが、日々の仕事でよくやっているような内容だったので、そんなに手こずることもなく、いつものとおり淡々と訳したら合格しました。

 

数ページのスタイルガイドに従って訳文を作成するというのも、実戦に近いな、という印象を受けました。原文にスペルミスがあったので(ミスの結果別の単語になっていて、知識がないと気づかないかも、という類のもの)、「あ、これ申し送りがちゃんとできるか見てるんだな」と思いましたね。

 

そもそもなぜこの試験を受けたのかというと、当時勤務していた翻訳会社がこの試験に協賛していて、1級合格者はトライアル免除で翻訳者として登録できたのですが、当時翻訳者採用担当だった先輩が「この試験の合格者は優秀な人が多いし、面接もやっているから安心」と言っていたので、私も力試しで受けてみようかと思ったのでした。元勤務先だけではなく、私が受験した時点では合計5つの翻訳会社にトライアルなしで登録できました。希望すれば取引先が一度に5社増えるということですね。

 

そうそう、この試験、面接があったんです。

 

一次試験の合格者は東京か大阪の翻訳会社で二次試験の面接がありました。冬の日曜日、豪雨のなか大阪の翻訳センター本社に出向いて面接を受けました。

 

面接の内容については事前にまったく情報がなかったので、「ここはどういう解釈でこう訳したのですか?」などと詰問されたらどうしよう、とドキドキしていましたが、訳文への突っ込みはなく、試験についていくつか訊かれました(分量は多かったですか、どんな時間配分で訳しましたか、難易度はどうでしたか、など)。あとは、普段どんな翻訳をしているか、翻訳支援ツールは使えるか、フリーランスになる予定はあるか、などといったことを翻訳センターの品質管理の方と楽しくお話しして帰ってきました。

 

直接聞いたわけではないので断言はできませんが、「二次試験」といっても翻訳の能力を確認するのが目的ではなく、「たしかにこの人が受験した本人だよね」というのを確かめる意味合いが強いのではないかと感じました。あとは、きちんと受け答えができるまともな社会人なのかを見る……というところでしょうか。

 

そのときは「わざわざ面接までやるなんて念が入っているな」と思っただけでしたが、このところ業界で問題になっていた盛り盛りの履歴書だのトライアル問題共有だのといったモラルに反する事例を考えると、面接がある翻訳の試験というのは、現存していればなかなか貴重だったのではないでしょうか。オンライン試験なんて別人が受けていても分からないですが、面接があるというのは抑止力になるでしょうしね。

 

分野はかなり限定的ではありますがほんやく検定の情報処理よりもやさしかったので(あくまで私1人の印象ですが)勉強中の人でも手を出しやすかったのではないかと思いますし、なんといっても合格すればトライアルなしで翻訳会社に登録できるので、翻訳者志望の方々の永遠の悩み「実務経験がないと応募できない、応募して登録できなければ経験が積めない、どうすればいいの?」に対する1つの解決策になっていたはずなので、試験自体がなくなってしまったのは残念ですね。ま、受験者が少なかったんだろうなぁ……。

 

合格したときはまだ会社員だったので「トライアルなしで登録」の権利はすぐには使えませんでしたが、1年以上経って独立したときに一社だけ連絡を取ってみたら、ほんとうにそのまま登録してくれてすぐに発注がありました。

 

そういうわけで、万難を排して一次と二次を受験した試験が消滅してしまったのは合格者としては大変残念です。今後履歴書や名刺に書いても「なにその試験?でっち上げじゃないの?」と思われそうで困りますね。

 

予想外にワード数が多かったときの話

お久しぶりです。

月イチの投稿を死守すべく、地下の穴から這い出してまいりました。

 

本日は、ワード数(作業負荷)が想定より多かったときの話。

 

たいした話ではありませんが、どこかで駆け出しの翻訳者さんに役に立つ、かも?

 

私は乳児がいるせいで1日の作業量を英語原文1000ワードくらいまでに抑えていて、取引先にもそのようにお知らせしているので、1万ワードを超えるような大きめの案件の打診はあまり来ません。1000ワードくらいの記事を作業期間2日ほどで請けることが多いです。

 

しかしもう去年のことですが、作業期間が長めに取れるということで、珍しく1万ワードを超える分量を依頼されました。

 

大きいプロジェクトを複数人の翻訳者で分けるというもので、私の担当はファイル数十個のうちの5ファイルでした。

 

説明のため、仮に全ファイル数を20として、私の担当分をFile #16~#20とします。(細かい数値は適当に変えています。)

 

1ファイルごとの分納を指示され、File #20からお願いします、ということだったので、File #20から取りかかりました。WWCは800で、作業を開始したのが木曜の午後、納品が月曜の朝だったので、1日の処理量が少ない私でも余裕で終わるだろうと思って開始しました。

 

ちなみにWWC(Weighted Word Count)というのはCATツールを使ったことがない方には何のことやら、だと思いますが、CATツールを使うと翻訳メモリ(TM)に入っている過去の訳文を使い回しできるので、1から訳すよりは楽になります(よほどうまく管理された翻訳メモリでないと訳文の質には悪影響が出ますが、話が逸れるので割愛)。「TMを使って楽になった分を差し引いて、実際の負荷に近づくように計算しなおしたワード数」がWWCだと思ってください。会社によっては実ワードとか新規換算ワード数とかワークロードとか、いろんな呼び方をするようです。

 

※4月26日追記:つれあいと話していて判明したのですが、WWCを「Whole Word Count=総ワード数」(マッチレートを考慮しない、純粋な全体のワード数)としている会社もあるようです。ご注意ください。コンテキストで判断しましょう。ややこしいなもう。業界で統一してくれ。

 

1万ワードのファイルでも、TMからたくさん流用できるのであれば、WWCは500ワード、ということも十分にあり得ます。

 

さて、File #20は全体のワード数が2500ですがWWCは800だったので、TMからだいぶ流用できるということになります。長めに見積もっても金曜日の夕方には終わるだろうと思って始めました。

 

しかし、木曜の午後に始めて、金曜の昼になってもまだまだ先がありそうです。半分くらいしか進んでいません。何かオカシイな、設定されているTMが間違っているか、お客様がくれたワード数の解析結果が間違っているか、どちらかではないかと思い始めました。

 

そこでワード数の解析結果を改めて見てみると、「Repetitions」(Rep、繰り返し)が2000ワードくらいあることになっていました。本当は開始前にちゃんと見て分析しておくべきなのですが、いつも何も問題なく作業できるお客様だったのと、大きいプロジェクトの一部を担当するというのが年単位でお久しぶりだったので、完全に油断していましたね。

 

 Repとは同じ原文が何度も出てくる場合に使われる分類で、2回目以降は「繰り返し」なので作業負荷が低いとみなされます。初回登場時に訳せば、それ以降は訳す必要がないとみなされ、作業負荷は0%で計算されることもあれば、10%や30%になることもあります(案件によって異なる)。そして、楽になったとされた分、報酬も少なくなります。

 

今回の案件では、この「Rep」の数値に「Cross-File Repetitions」=「ファイル間の繰り返し」も含まれていました。複数のファイルがある場合に、たとえばファイルAで訳した文が、ファイルBやファイルCにも出てくる、というときに使われる分類です(TradosだとRepとCross-File Repは別々に算出されるはずですが、このときはTradosではなく、RepとCross-File Repがまとめて「Rep」になっていた)。

 

解析はFile #16→#17→#18……の順でされて、実はFile #20に出てくる文は#16~19と重複しているものが多く、たまたま私が#20から作業を始めてしまったために#20の実作業負荷が上がってしまったのだろうかと思いました。そうであれば、#20の作業は大変であっても、その後の#16~19の作業は#20で訳し済みのものがたくさん出てくるので楽になるはずです。

 

しかし、#16~19のファイルの中身を改めてよく見てみると、#20と同じ文がそんなにたくさんあるようには見えませんでした。

 

「さてはこれ、他の翻訳者さんの担当ファイルも全部ひっくるめてRepが計算されているな……?」と思い当たりました。

 

つまり、私が担当する#16~20だけで解析されているのではなく、File #1~20全部でワード数(WWC)が算出されているということです。

 

しかしこれは問題です。いくら他人に割り当てられたファイルと重複する文があったとしても、自分の作業はあくまでも「一からの翻訳」になります。リアルタイムで更新されていくオンラインTMを使っていたとしても、自分のところでRepとして計算されている分を、他の翻訳者が先に訳してくれるとは限りません。自分が「最初に訳す人」になることは十分にあり得ます。そうしたら、「Rep」扱いでお金をもらえないのはおかしいですよね。

 

そのときに使っていたクラウド型CATツールは翻訳者が自分でワード数を解析することができませんでした。

 

そこで、CATツールからバイリンガルファイルをエクスポートして、Trados Studioで新規のTMをつくり(TMはエクスポートできなかった)、解析をかけてみました。そうすれば少なくとも自分の担当ファイルだけでのRepがどれくらいあるのかは分かります。

 

File #16~20だけ解析した結果、やはり#20のRepは数百ワードしかありませんでした。

 

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ワード数解析結果の例(数値は適当に入れています)

その時点でもう金曜の夜になっていたので、月曜朝に納品するためにとりあえず週末の夜に頑張りました。体感ではWWCが2000くらいありましたね。

 

何とか終わらせ、納品するときに、お客様に以下の点を問い合わせました。

 

  • Repがとても多いことになっているが、これは私の担当ファイル内だけで算出したものか?(いきなり「間違ってるよね!」と切り出さず、一応確認ね)
  • もし全ファイルで算出しているのであれば、実際の作業負荷と合っていないので、私の担当ファイルだけで解析しなおしてもらえないか?

 

自分が翻訳会社でコーディネーションをしていたときは、たくさんのファイルがあるプロジェクトを複数の翻訳者に分ける場合、翻訳者さんごとにファイルを分けてから、1人ずつ解析をし直して、その数値をもとに発注していました。

 

クライアントからは全ファイルでCross-File Repを算出した分のお金しか支払われないことがほとんどなので(そこは営業が説明して頑張れよ、と思うところではあるが)、翻訳会社としてはつらいのですが、翻訳者さんに実際の作業分のお金をお支払いするのは当たり前のことですからね。

 

今回のお客様は別に翻訳者をだましてやろうと思ったのではなく(いつもとてもいいお客様です)、単に忘れていたか、思いつかなかったのだろうと。

 

問い合わせの内容は、すぐに確認していただけたようで、

  • 解析結果は翻訳者ごとではなく、全ファイルを対象としたものである
  • 解析結果はエンドクライアントから提供されたもので、仕様上、翻訳会社側でも解析しなおすことができない
  • File #20はその他の全ファイルを要約した内容なので、Cross-File Repの影響が大きくなってしまった(実際にその他のファイルではRepがほぼなかった)
  • 出す前に気づかなくてごめんなさい

 

という旨の返信がありました。

ここまでは予想通り、じゃあ報酬はどうなるのか?というと、

 

File #20はすべて新規翻訳扱いとして支払っていただけることになりました。

 

訴えなければ800ワード分のお金しかいただけなかったものが、2500ワード分いただけることになったわけです。Cross-File Repの分だけ何とかなってほしかったのですが、ファジーマッチもひっくるめて全部新規扱いにしてくださったので、誠実な対応をしてくださったな、という印象が残りました。よかったよかった。

 

というわけで、翻訳者が複数人アサインされているプロジェクトでの「Rep」、特に「ファイル間の繰り返し」のワード数は、作業開始前によく確認しないとね……という教訓でした。

 

お客様提供の解析結果が何らかの理由で間違っている(解析をした後にファイルがアップデートされたとか、解析したTMと渡されたTMが違うとか)というのは割りとよくあることなので、疑問に思ったら早めに訊いたほうがいいですね。

 

長くなってしまいました。お読みくださった方、ありがとうございます。

翻訳学校仲間からの近況連絡

少し前のことですが、翻訳学校に通っていたときのクラスメイトから連絡がありました。今Eテレで放送している海外ドラマの制作に携わっているとのこと。

 

昔の仲間が活躍しているのを知るのはうれしいことですし、分野は違いますが刺激にもなります。

 

私は専門学校を卒業したあと、20歳のときに翻訳学校フェロー・アカデミーの「全日制レギュラーコース」(現カレッジコース)に入りました。人生の割りと早い時期から翻訳をやりたいと思っていたんですね。

 

もともとは高卒で働こうと思って商業高校に通ったのですが、途中でいろいろと想定外のことが起こりまして、このような流れになりました。

 

そのようなわけで大学を出ていないし、留学経験もありません。翻訳者さんって、高学歴のいかにも頭が良さそうで教養のある人が多くて、私ごときが「翻訳者仲間」とか思っちゃいけない気が常にしております。でもいちおう翻訳で食べていけてますよ!高卒・専門卒で翻訳者を目指しているみなさん、がんばりましょう!

 

閑話休題

 

全日制のコースを選んだので、月から金までめいっぱい翻訳の講義がありました。どのクラスでもたっぷり課題が出るので、その1年は、学校にいる以外の時間は課題をやっていた記憶しかありません。平日は帰宅してから夜中まで翻訳、土日もとにかく翻訳。週1、2回アルバイトをしていましたが、店のカウンターに辞書を広げて課題をやっていました。

 

だから1日1時間動画を見れば40日で翻訳者になれる(でしたっけ?細かい数字は忘れました)、とか言われたとしたら、ムリやろ、という以外の感想はうかびません。

 

講師はみなさん現役の翻訳者・翻訳家で、授業で扱われる内容は先生方が実際に仕事で使われたもの(またはそれに近いもの)ばかりだったので、非常に実践的でした。当時は毎日必死で、与えられる課題を訳すことしかできませんでしたが、今思えば、あの1年で仕事につながる基本的なことが身についたのだと思います。

 

「もうかりません」というのは先生方からよく聞きました。だから講師に、楽々年収1000万!とか言われたら、以下略。

 

また、学校の課題とはいえ1年間翻訳漬けだったので、結果的に「量をこなす」というのを体感できたということにもなるかもしれません。

 

でも履歴書に実績として書いてはいませんよ!そんなこと思いつきもしなかったわ。

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当時のテキストは今も大事に使っています


 

学校に通っていた間は課題をこなすのに忙しくて、クラスメイトと遊びに行った記憶はほとんどないのですが、卒業後はよく集まって飲みに行くようになり、20年近く経った今でも、7人の仲間と定期的に連絡を取っています。

 

みな卒業後に1度はなにかしらの翻訳の仕事をして、その後別の仕事をしている人もいますが、今もフリーランスまたはインハウスの翻訳者、という人は私を含めて5人います(「トライアルに合格しただけ」ではなく、翻訳で食べている人たち)。

 

ほかの学校やほかのコースでは「受講生が実際に翻訳の仕事をするようになった率」がどれくらいなのかわからないですが、卒業して7、8年後くらいだったでしょうか、飲みの席で「みんな何かしら翻訳関係の仕事ができてるのって、すごいよね」という話をしたことを思い出します。

 

ちなみに私が昔勤めていた翻訳会社では、フェローの全日制コースの卒業生が同時期に3人いたことがあります(当時の社員数は20人くらい)。

 

1年間週5で通うコースなので学費もかなりのものですし、1年間は仕事ができなくなってしまいますので(あの課題の量で、授業についていこうとしたらほかに仕事をするのはほぼ不可能かと)、誰にでもおすすめというわけにはいきませんが(ほかにもコース・学校はたくさんありますしね)、今私が翻訳者として生計を立てていられるのは、一線で活躍しているたくさんの翻訳者・翻訳家から直接教えをうけられたから、そして同じ目標を持って切磋琢磨できる仲間に出会えたからなのは間違いありません。

 

翻訳学校なんて必要なかった、という同業者さんは星の数ほどいるでしょうし、最近はどうも中身が怪しい講座が多いので、学校に不信感を持っている人もいるかもしれませんが、翻訳学校に行って良かった、と思っている人もいるというサンプルをこそっとウェブの海に放出して本日は退散します。

 

あ、ただし、講座選びはくれぐれも慎重に……。

保活、めでたく終了。

4月入所の選考結果が出ました。

4月から、きょうだいそろって同じ認可保育所に通えることになりました。

 

「両親ともに週5日間以上、1日8時間以上の就労」(最高ランク)の上に、

  • 認可外保育園に週3日以上通わせている加点
  • きょうだいが既に入所している園に入りたい加点
  • 落選期間が6か月以上になっている加点

が付いているので、さすがに落ちることはないだろうと思っていましたが、それでもはっきりするまでは不安でした。

 

これにてめでたく、保活は完全に終了(もし引っ越ししたら、また初めからやり直し、ですが……)。

 

今の認可外保育園の先生がとてもよくしてくれているので寂しいのですが、やはり逆方向の園に毎朝毎夕2人がかりで送り迎えするのは時間と労力がもったいないので、同じ園に通わせるのがベストでしょう。

 

4月になったらまた慣らし保育からスタートなので、仕事にあてられる時間が減ってしまいますが、それも1週間程度のこと。

 

思えば、保育園の心配をし始めたのが上の子妊娠中の6年ほど前。

それから今までの間にどれだけの時間、この問題に頭を悩ませ、不安で眠れない日が何度あったことか。

 

保育士さんたちの待遇が改善されてなり手が増え、子育てにもっと公金が使われて子どもが大事にされる社会になり、この後の世代のお母さん・お父さんが保育園問題でこんなにも悩むことがなくなりますように。

 

「通わせ慣れた」園にそろって行ってくれる日が楽しみです。

 

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開封するときは胃がキリキリしました。